2011年03月03日

哲学的な彼女企画選考結果発表(3)


哲学的な彼女企画選考結果発表(1)
哲学的な彼女企画選考結果発表(2)

■アイデア評価
今回の企画は、予想外に実力者ぞろいになってしまったため、
たとえば、「普段小説書いたことないけど、
ぱっと哲学女子のアイデアを思いついて、
さくっとワンシーンだけ書いてみました〜
」という作品だと、
思った以上に「読者評価が低い」というさんさんたる結果になりがちです。

しかし、文章力や小説としての出来栄えは度外視して、
表現しようと思った、その発想自体」が評価されても
良いのではないでしょうか。

というわけで、以下は若干ネタバレになりますが、各作品で
主催(飲茶)がアイデアとして特に面白いと思ったものを
紹介していきたいと思います。

・「『ぽん』と君は言う」久谷
 ⇒
「じゃんけんで、あたしが勝ったら、お風呂沸かして」

日常の他愛のないことをいつも「じゃんけん」で
決めてきた「僕と彼女」。
「僕」は決まってグーを出し、「彼女」は決まってパーを出す。
それで「僕と彼女」は丸く収まってきた。
しかし……。

じゃんけんで、あたしが勝ったら、別れて

さぁ、どうする? 普通に考えれば「僕」は別れたくないから、
チョキを出せばいい。いや、だが、相手だって、
いつもの習慣を知っているのだ。だとしたら……、
「彼女が本当に僕と別れたいと思っているケース」
「彼女が別れたくないが、ただ僕の気持ちを試しているケース」
といった考えられるあらゆる状況を想定し、
それぞれのケースで彼女が何を出すかを推測したうえで
どのケースにおいても、「最悪でも負けない」ような
引き分けを狙う「手」を考えるとしたら……

いくわよ! じゃんけん!

――じゃんけんひとつで、ここまで思索的に盛り上げられるものか、
と「じゃんけんの可能性」を提示する画期的な作品でした。

・「超人少女えたぁなる・ニーチェ」皆本暁
 ⇒
 哲学女子たちの異能バトル。
 -------------------------------------
 ホッブズ「行っちゃえ! リヴァイアサン!
  リヴァイアサンは誰にも負けない!
  強いとか弱いの話じゃないよ、そーゆー風にできてるんだから!


 恐怖による絶対支配の象徴、リヴァイアサン。
 ホッブズがそう定義した以上、この大蛇を殺すことは原理的に不可能。
 それでも、ニーチェは蛇に向けて一歩踏み出した。

何で逃げないの!? この子を見たら、絶対怖くなるはずなのに!

私が何より怖いのは、諦めてしまうことよ!
 私が諦めない限り、『力への意志』は必ず私を勝利へと導く!
 ツァラトゥストラ!

 -------------------------------------

という感じで燃え燃えで進んでいきます。
単に、特殊能力で相手を倒すだけではなく、
きちんとニーチェの哲学で相手の哲学を打ち負かして勝つのが、
この作品の凄いところ。

それが、あなたのルサンチマン

という哲学少女ニーチェの決め台詞は、最高。
案外、一番商業向きの作品かもしれない。

・「チャーハン大盛り、あ、ご飯抜きで 」svaahaa
 ⇒
 「チャーハン大盛り、あ、ご飯抜きで
 と定食屋で女の子がいったところから始まる
 「チャーハンとは何か」という哲学議論。

 「およそどーでもいいこと」にこだわり
 延々と議論をふっかけてくる女の子と、
 そしてそれに振り回される僕、という構図。
 哲学女子小説には「こういう王道(方向性)がある」というのを
 指し示す作品でした。

・「おやつは300円以内、バナナは入るか、からの論
おっぱいはAカップ
 ⇒これもさっきと同じ王道パターン。
 「バナナはおやつに入るのか?」という日常のよくあるネタに対して、
 「バナナとは何か?」と真面目に議論しようする哲学女子と僕の物語。

 -------------------------------------
「バナナチップスがバナナであるとしてしまった上で、
 バナナはおやつではないとしたら、
 バナナであるバナナチップスもその中に入るわけで、
 すなわちバナナチップスもおやつではないとなるわけだから」

「すまん、さっぱりわからん、バナナ言いすぎだぞお前」
 -------------------------------------
 
これらの作品によって 
『こだわり型』というカテゴリの哲学女子が具現化されました。

・「チョコレートがあります」フクミハルカ
 ⇒
 「ここに、チョコレートがあります」
 「そこに、チョコレートがあります」
 という会話の繰り返しがとてもいいです。
 この雰囲気で、チョコレートを使って
 現象学的に存在論を展開してほしいと思いました。

・「未来のカタチ」じょにぃA
 ⇒ボスを倒さないと世界の未来はない。
 でも、ボスを倒してしまうと記憶が消えて、
 (自分が予定していた)未来がなくなる。

 「このボタンを押せば、ボスが倒せる」という瀬戸際で、
 未来について、アンビバレンツ(あちらを立てればこちらが立たず)
 を突きつけられる正義の味方の物語。

 「哲学」が題材ってことで、
 こういう星新一的な、非日常を舞台にした
 皮肉っぽいショートショート(二律背反に追い込まれる物語)が
 たくさん投稿されるだろうと思っていましたが、
 実際には意外に少なかったので、貴重な作品でした。

・「はかない少女」ジョージ高津
 ⇒
 「あえてパンツをはかない」。ただそれだけのことによって、
 いつもの退屈な日常が、危険で新鮮な非日常に変わる、
 と主張する女の子。
 ゲームでもそうだけど、「縛りプレイ」ってなぜあんなに
 楽しいのでしょうか。
 人生に「縛り」を加えることで生み出される『何か』
 というテーマに焦点を合わせて考えてみたくなりました。

・「TTGK48」クロードニュウスキー
 ⇒TTGK48(てつがく48)というアイドルユニットの
 オーディションの話。「哲学者になりきって演じる」という
 お題に対して、
 「孔子になりきってください」⇒「はい、子牛ですね
 「墨子になりきってください」⇒「ええ、牧師ね
 と間違った解釈をしてしまう彼女たち。
 僕はツボにはまって面白かったです。
 できれば、彼女たちの頓珍漢な演技を
 審査員が勝手に「うおお!なんて哲学的なんだ!」と
 評価してしまう、というアンジャッシュ的展開だったら
 もっと自分好みでした。(笑)

・「ツムグ。」Chia
 ⇒舞台は合コン。せっかく下らない話でみんな盛り上がっているのに、
 真面目な返答をして場を白けさせる哲学女子、という物語。

 「空気が読めず、他人から煙たがられている哲学女子」に対して、
 「僕」だけが「彼女の魅力」に気づいているという関係性が重要。
 そして、「僕」から積極的に哲学女子にアプローチすることで、
 「え?そ、そんなこと言われたのはじめて」的に哲学女子を
 ドギマギさせて、デレさせていく、というラブコメ展開がGOOD!

 これも哲学女子小説の王道(方向性)になりえると思います。

・「一刀両断」まがるストロー
 ⇒
 現実主義で、何でも「一刀両断」してしまう女の子という設定。
 その新規性のある設定でもう少し書いてみてほしかったです。
 恋愛とか「一刀両断」できない問題に立ち向かうとか。
 最後に道元禅師の「一刀一断」に目覚めるとか。

■作品分析
全作品について、登場する哲学女子のカテゴリ分けを行い、
どんなタイプの哲学女子が多かったか、を調べて傾向を分析し、
次の世代のための何かを残そう……
と思って、途中までやって表にまとめていたのですが、
すみません、予想以上の投稿数で最後までできませんでした。(^^;

とりあえず、途中までやったカテゴリ分け。

@天然型:
 あまり哲学に詳しくはないが、ふとしたときに周りがはっとするようなことを
言ってしまう天然型の女の子。
 「子供こそが最高の哲学者である」という言葉を体言したタイプ。
(例)
・「日常と勉強と少々の哲学」島中栄一郎
・「哲学的な彼氏企画」橙。

 -------------------------------------
「わたしにとっての事実は絶対に事実だし、
まわりがどう言おうとそれはわたしの事実を、わたしの世界を
変えられるものじゃないんだよ。
『しゅかん』に勝てる『きゃっかん』なんてないんじゃないかな?」
 -------------------------------------

A屁理屈型:
自分の目的(欲望)の遂行のためなら、屁理屈も辞さない。
無理やりな議論をふっかけて、主人公を振り回すタイプ。
(例)
・「駄目だっ。コイツなんとかしないとっ!」ダイちゃん

テンション高く、色んな哲学理論やうんちくを降りまわして、
自分の意を押し通そうとする我ままキャラクターは、
うまくはまるとそれだけで面白い作品になりそうです。
少しタイプは違うが、屁理屈型としては、以下が秀逸。
・「クリスマスの過ごし方 by 土屋的な彼女

Bこだわり型:
およそどーでもいいことに、こだわってしまうタイプの女の子。
(例)
・「チャーハン大盛り、あ、ご飯抜きで 」svaahaa

C迂遠(回りくどい)型:
なんか小難しいことを言ってくると思ったら、
実は単に「好きだと言いたかっただけ」
または「好きだと言ってほしかっただけ」だった……
という女の子。
回りくどいが、そこが「萌え」ポイント。
(例)
・「俺と彼女の明確な温度差」維川 千四号

D孤高型:
思索的で内向的で、常に「哲学的な何か」を求めて考え込んだり、
本を読んでいるタイプの女の子。
たいていの場合、友達が少なく、理解者も少なく、
近づきがたい雰囲気を持っている。
しかし、その「近づきがたさ」を乗り越えたとき、
「哲デレ」状態があらわれる。

ちなみに、大賞作品「シャッターボタンを全押しにして」は、
孤高型であると思われる。

(続く)

この記事へのコメント
 たしかに、感想を読んでいくと、アイディアの評価は優先度が低いですね。

 むしろ、内容よりも、読みやすさや会話のテンポが重視されている傾向が他の方の感想を読んでいて感じました。

 哲学という要素は、面白い視点やアイディアに力点が置かれる分、ある意味ライトノベルとは水と油なのかもしれません。

 だからこそ、その水と油を上手に料理する必要があるのでしょうね。

(飲茶)
おそらく、「この文章は、知的興味深いものだし、整合性もとれているし、厳密であるから素晴らしい」といった殿様商売は、小説においては通じない、ということだと思います。
もし、尾形さんが、「哲学にそれほど興味がない人」に読ませる文章を書くのを目指している人だとしたら、そういったスキル(料理)は重要なものになるでしょうね。
Posted by 呟き尾形 at 2011年03月05日 07:37

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