2010年08月22日

史上最強の哲学入門、製作秘話(7)

前回「副作用があるからドーピングはダメ」に対して、
じゃあ、副作用がないものならいいんでしょ!」という観点で答えましたが、
別の観点として「副作用があってもいいじゃないか!
というのはどうでしょう。

副作用があって肉体がボロボロになろうと世界記録が出せればいいんだ!
という考え方はなぜいけないのでしょう?

そもそもマラソン選手など心臓に負担をかけるアスリートは、
普通の人より寿命が短いといいます。それは明らかに、
速く走るための鍛錬として肉体を酷使し続けた結果の「副作用」です。
しかし、トップアスリートたちは、それでもかまわないのです。
彼らは、「今日勝つ」ためならば、
今日世界記録を出せる」ならば、
健全とは言いがたい特殊な肉体となり長期的には身体がボロボロになろうと、
寿命がすり減ろうと、いっこうにかまわないのです。
いやむしろ、彼らはこう言うでしょう。

知れている……!
 長生きできるトレーニングなど、たかが知れている!


こういった長期的には身体がボロボロになってしまうほどの鍛錬によって
「勝利を得る」という行為は、ドーピングとなんら変わらないのでは
ないでしょうか?
もし副作用がある(寿命が縮む)から、ドーピングをやめよというなら、
アスリートの過剰な鍛練もやめさせるべきでしょう。

つまりこのように考えていくと、トップアスリートの「明日を犠牲にする
強烈なトレーニング」は、本質的にドーピングと変わらないわけです。

もちろん、ドーピングは倫理的常識的には決して受けられません。
しかし、実際には、
明日を捨ててでも今日勝利を得たい
明日を捨てるほどの犠牲を払ってでも肉体を強化したい
というのが競技者の本心であり、
それが彼らの「強さ」の本質でもあると思うのです。
そして、その「強さ」の本質を突き詰めていった究極の結論が、
ドーピング」であり、また、その結論を体現したキャラクターが
ジャックハンマーだと思うのです。

そして、そういったキャラクターが生み出されるのは、
板垣先生がきちんと
強さとは何か?強さの本質になっているものは何か?」を
哲学的に根本から問い直しているからであり、
だからこそバキは、いわゆる「格闘技もの」にありがちな
○○流拳法の使い手のさらなる強い敵が現われた
その敵をあっさり倒した使い手が現われた」などといった
単純な展開の漫画とは一線を画する人気作品になっていると思うのです。

というわけで、ジャックハンマーって凄いキャラクターですよね

――といった感じで、板垣先生とジャックハンマーについてお話をし、
そのあとは同じような感じで、最凶死刑囚の話、猪狩の話、
SAGAの話、ピクルの話、
と依頼の話そっちのけで延々と話し込んでしまいました。(汗)

よし!じゃあ、仕事場に行こう!

バキの話がひと区切りついたところで、板垣先生は僕達を
仕事場に案内してくれました。そして、なんとその場で、
表紙のサンプルを「三枚」も描いてくれたのです。
そのどれもがインパクト抜群の素晴らしい表紙で、
ひとつ描きあがるたびに担当さんとふたりで、
それにしましょう!それにしましょう!」と連呼してました(笑)
(ちなみに、このときの三枚目が今回の表紙の原案となり、
後日、板垣先生に仕上げていただきました)
最後は、板垣先生とがっちり固い握手をして打合せ終了。

以上が「板垣先生に表紙を描いてもらうまで」のお話の顛末でした。

その後、僕は本文を書き始めるわけですが、
絶対に駄作を書くわけにはいかず、
それはもう異常なまでのプレッシャーでした。
(とはいえ、おかげさまで、好きなだけバキネタを文章に仕込めるので
楽しい執筆ではありました(笑))

一応、自分の執筆戦略としては、
よくある哲学入門書のように哲学者をただ時代順に紹介する形式だと
説明がぶれてわけがわからなくなるので、
真理、国家、神、存在」とテーマを4つに絞り、
テーマごとに哲学者たちの思考の歴史を物語として
書いていくという形式を考えました。
また、4つのテーマが完全に独立してバラバラにならないよう
その4つすべてに共通する「隠しテーマ」として、
価値(価値観)」というキーワードをひとついれてみました。
他者に『勝ち』を求めるのが格闘家であるならば、
 他者に(新しい)『価値』を求めるのが哲学者である

という隠しメッセージをこめて書いてみたつもりです。

で、実際に出来上がった本の評価ですが、今のところ、
MIXIやアマゾンやツイッターではかなりの高評価です。

なお、つい先日、板垣先生から出版社に直接電話がかかってきて、
かなり好感触な感想をいただきました!
(板垣先生には食事に行こうと誘われているので近々お会いする予定です)
また、そのとき板垣先生から「次回作は書かないのか?」と
聞かれたらしいのですが、これはもしかしたら、もしかすると、
史上最強の哲学入門、東洋哲学編(表紙 板垣恵介)
が実現する可能性はゼロではないかもしれません!

というわけで、
延々とひっぱり続けた「史上最強の哲学入門、製作秘話」ですが、
まだまだ続くかもしれません。今後とも宜しくお願い致します。

やっぱ……
言わなきゃならねェんだよな……
『ホントウ』の勝負はここからだ……!


この記事へのコメント
やはり決め手は飲茶さんの「バキ」に対する熱い気持ちだったのでしょうね。
板垣先生にとっても哲学的な観点からのコメントは新鮮だったのでしょう。
次回、東洋哲学編が誕生することを祈ります。
(その前に板垣先生とのお食事の様子も気になります)

(飲茶)いや、でも本当にそうだったのかもですよね>「バキ」に対する熱い気持ち

これだけバキファンなんだから、むげにするのは悪いかなと思ってくれたのかもしれません(笑)
バキファンでよかったです。
Posted by 天沢透 at 2010年08月22日 17:42

今晩は、

>東洋哲学編
史上最強の哲学入門をみて、
唯一"あれっ?"っと思った事が、
アジアの思想家が、でてこなかった事です。
やはり、布石だったのですね(w
私個人的には東洋の思想、特に
中国の思想のほうが、興味があるので楽しみに
しています。

(飲茶)西洋とは根本的に体系が違うと思うので
一緒に説明しない方がいいと考えた次第です。
(物語がぶれるので)
ちなみに、同じ理由で、スピノザをいれませんでした。
Posted by memnoch at 2010年08月22日 19:38

ドーピングの中には覚せい剤、麻薬に分類されるものもあるので、
ドーピングがありというなら、
受験生が覚せい剤を使用して不眠で勉強して合格を勝ち取るのもありとうことになっちゃいませんか?

(飲茶)理屈では、「受験で受かることが、その後の人生よりも何よりも大事という価値観を是とするのならば、それもありだろう」なのですが、感情的には「絶対にダメ!」ですね^^;
Posted by Eight Temple at 2010年08月24日 01:31

>Eight Templeさん
なら麻薬・覚せい剤の何がいけないのか?というのも同様の問題として扱えますね。
あとで身を滅ぼすから?迷惑がかかるから?

タバコや酒が国の許可の元嗜好品として売りだされて、麻薬の類はダメというのも難しい問題であると思います。
Posted by KT at 2010年08月24日 22:19

筋肉増強効果のある薬はNGだが、食品ならOKなのかーってたしかに思いますねー。鍛錬とドーピングの境界線はどこなんでしょう?w

ただ、ドーピングの問題は競技者個人だけでなく、競技自体や、他の競技者・・・むしろ、その競技を取り巻く社会への影響を考慮すべきなのかもしれません。
トップアスリートが危険なドーピング薬を使っていることが普通の社会で、一般の生活者はそれをどう受け止めるか・・・「危険なので真似しないでください」ではすまないんじゃないかと。スポーツ用品のようにドーピング薬が用いられると、それはもはやスポーツではないような気もします。
麻薬も社会への影響が大きいので、その保持や使用に刑事罰が定められてるんでしょうね。まあ、周りに迷惑かけなければ良いというわけではないでしょうけど・・・。

(飲茶)名目上は健全な肉体の育成ですものね。(といっても、トップアスリートの身体が健全とは思えませんがw)
Posted by ひつじ at 2010年08月26日 09:20

始めまして。
史上最強の哲学入門と東洋の鉄人たちの史上最強の哲学入門を今、読み始めました。
今の時代に、
みんなが哲学を学びお互いを
慮るように生きていければ良いなぁと思います。

Posted by あおいちゃん at 2017年09月20日 12:00

コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック