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2011年02月28日

哲学的な彼女企画 選考結果発表(1)

哲学的な彼女(哲学女子小説)企画の選考結果を
以下に発表します。

応募数:223作品
募集期間:2010年10月1日〜12月31日
枚数規定:原稿用紙1枚〜100枚

■大賞
シャッターボタンを全押しにして」金椎響

■作品賞
コギト」折伏ぬゐ
先輩と、真実の口」牛髑髏タウン

■ライトノベル賞
僕と彼女の哲学的おっぱい議論」7GO
僕と狂人」やみくろ

■大賞選考概要
飲茶が「面白かった!」「これは良い作品だ!」と素直に思ったものを
最終選考作品とし、以下の通り選出した。
<大賞候補作品>
・「シャッターボタンを全押しにして」金椎響
・「哲学的な魔女、あとオレとか」金椎響
・「コギト」折伏ぬゐ
・「先輩と、真実の口」牛髑髏タウン
・「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」エキセントリクウ
・「けんまほ」ルト
・「虚無の奏でる音楽」野々宮真司
・「僕と彼女の哲学的おっぱい議論」7GO
・「祈り屋と衒学者」svaahaa
・「僕と狂人」やみくろ

上記の作品のうち、読者評価(平均点、高得点)を加味し、
ライトノベル作法研究所のうっぴーさんと協議した結果、
「シャッターボタンを全押しにして」を大賞とすることに
決定した。

■高得点作品賞
最も読者評価の合計点が高かった作品。

1位「俺と彼女の明確な温度差」維川 千四号 640点
2位「チャーハン大盛り、あ、ご飯抜きで」svaahaa 630点
3位「シャッターボタンを全押しにして」金椎響 600点
4位「先輩と、真実の口」牛髑髏タウン 580点
5位「日出山道花の恍惚」幕ノ内ちゃっぷりん 390点
6位「僕と彼女の哲学的おっぱい議論」7GO 300点
7位「究極の妹」開蔵 290点
8位「哲学的な魔女、あとオレとか」金椎響 270点
8位「未完成の関係」開蔵 270点
10位「コギト」折伏ぬゐ 260点

■平均点作品賞
最も読者評価の平均点が高かった作品。

1位「西暦2236年 (※SF注意)」色音 40点
1位「シャッターボタンを全押しにして」金椎響 40点
3位「日出山道花の恍惚」幕ノ内ちゃっぷりん 39点
4位「哲学的な魔女、あとオレとか」金椎響 38点
5位「コギト」折伏ぬゐ 37点
6位「先輩と、真実の口」牛髑髏タウン 34点
7位「哲学の道で少女は思考する故に少女あり」エキセントリクウ 33点
8位「けんまほ」ルト 32点
9位「死の季節」金椎響 31点

■感想人数作品賞
最もたくさん評価数を集めた作品。

1位「チャーハン大盛り、あ、ご飯抜きで」svaahaa 26人
2位「俺と彼女の明確な温度差」維川 千四号 25人
3位「先輩と、真実の口」牛髑髏タウン 17人
4位「シャッターボタンを全押しにして」金椎響 15人
5位「究極の妹」開蔵 14人
6位「彼女は『彼女』なのか?」いも 13人
6位「付き合う意味が分からない!」岸田四季 13人
8位「『ぽん』と君は言う」久谷 12人
8位「僕と彼女の哲学的おっぱい議論」7GO 12人
8位「未完成の関係」開蔵 12人


■大賞選考について
本企画で「台風の目」となったのが「金椎響」さん。
長編(100枚)を4作品も投稿していながら、
それらがすべて一定レベル以上という、
甲子園で言うところの「怪物」みたいな投稿者。
(噂では、はじめて書いたらしいとのこと)

「シャッターボタンを全押しにして」は、
ゆっくりと静かに始まるボーイミーツガール。

「虐殺器官」「アウシュヴィッツの回教徒」など
人が虐殺される本を好んで読んでる女の子『伊豆見』と、
写真が趣味の『ぼく』の出会いの物語。

伊豆見は、
いつも本を読んでいて、友達がいなく、無口
内向的で何を考えているわからない
突然、哲学的な質問をなげかけてくる
という哲学女子の属性を持っているが、
アクセントとして、
微笑みなのか、薄笑いなのか、嘲笑なのか、
わからない笑顔
」を持っているというのがポイント。

この物語は
「伊豆見と僕が、友達以上恋人未満の関係で、
少しずつ仲が接近していく」というボーイミーツガール系の
小説であるわけだが、
そのアクセント(意味不明の笑顔)が、
今の僕の意見は、彼女を満足させたのか、
 それとも浅い考えだと嘲笑されたのかわからない

と僕を動揺させる要因となっており、
読者の方も、その彼女の反応にドキドキされられる。

ところで、本作品は、哲学女子小説の王道を指し示しているように思える。

整理するとこんな感じ。
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登場人物は二人。
■僕(普通の人、読者が感情移入する人物)
■哲学女子(何を考えているか不明、変人で友達いないけど美少女)

シーン1「出会い」
 ⇒僕と哲学女子が出会う。
  僕「ねぇ、いつもひとりで何の本読んでるの?」
  哲学女子「……(無関心なまなざし)」

シーン2「とまどい」
 ⇒僕が哲学女子の言動に振り回される。
  僕「え、い、いや、そんなこと考えたことないし」
  哲学女子「……(冷たいまなざし)」

シーン3「接近」
 ⇒僕のちょっとした一言で、哲学女子に見直され、急接近する。
  僕「死とは何かかー、うーん、僕はこうじゃないかと思うんだ」
  哲学女子「……!」
  (以後、哲学女子の方から、
   僕に自発的に接触する態度を示すようになる)

シーン4「告白」
 ⇒クライマックス。告白そして哲デレへ。
※↑は一例です。
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上記のように分析してしまうと、ボーイミーツガール展開としては、
王道すぎるように思えるかもしれないが、
「その王道を哲学女子という題材で真正面からやってみたらこうなった」
という意味では、本作品には大きな歴史的意義があると思う。
特に、

彼女の哲学的な質問に対して、僕がなんと答えるのか、
 その回答で彼女がどんな反応を示すのか、
 というドキドキ感

そして、そんなふたりの距離が少しずつ
 ゆ〜っくりと近づいていくニヤニヤ感


といった「読者を引き込む」部分をきちんと演出して
ひとつの作品として書き上げた
金椎響さんの才能を高く評価したい。

正直なところ、金椎響さんの文章は、表現が荒削りだったり、
描写でつっかかることも何度かあったので、
純粋な作家としての腕であれば、
牛髑髏タウンさん、折伏ぬゐさん、
エキセントリクウさん、野々宮真司さん
の方が上手であろうと思うが、
作品毎にそれぞれ独特の雰囲気があり、その雰囲気の世界観に
読者を引き込む筆力という点では頭ひとつ飛びぬけていると感じた。

実際、金椎響さんは、100枚の作品をさくさくと書き上げられる速度があること、
かなりの読書家である(と思われる)こと、
などから、彼はプロとして普通にデビューできる逸材ではないかと考える。

幸いなことに、彼の作品が「高得点かつ最高平均点作品」であったため、
選考側としては迷うことなく、満場一致で大賞を決めることができた。

(続く)